あまりお目にかかることのない法人事業税の外形標準課税。マイナーすぎて気の毒なのでザックリ解説します。
外形標準課税 の対象となる法人
私がこれまで担当してきた関与先のうち、外形標準課税の対象となる法人は2~3件しかありませんでした。
それもそのはず、外形標準課税の対象となる法人は期末資本金の額が1億円を超える法人なので、 一般的な税理士事務所でこんなに規模の大きい法人が関与先になることは、なかなかないんですよね。
ちなみに期末資本金の額が1億円を「超える」法人が対象なので、ちょうど1億円の場合には外形標準課税の対象とはなりませんのでご注意を。
これまでの経験上、法人の資本金の額は300万円から1,000万円の間がほとんどじゃないかなと思いますので、資本金がこのくらいの額であれば、法人事業税は所得に対してのみ課税されます。
つまり赤字の場合には法人事業税は課税されないので、当然納税額は「0」となります。
税金を納める立場である法人側からすれば「納税がゼロで良かった」と思うでしょう。
けれども税金を徴収する立場である都道府県側からすると「法人が赤字だと税金が入ってこないじゃないか。規模が大きい法人は中小企業と比べて、それなりに行政サービス(道路とか)を使って事業を行っているんだから、仮に赤字だとしても税金を納めてもらわないと困る」と思うわけです。
そこで導入されたのが外形標準課税という制度で、法人が赤字の場合でも課税される仕組みになっています。
この制度独特の課税標準が「付加価値割」と「資本割」というものになります。
以下ではこの外形標準課税の課税標準について説明します。
外形標準課税の課税標準
外形標準課税の対象となる法人は「付加価値割」「資本割」「所得割」の3つの合計額を納めることになります。
付加価値割
まずは付加価値割です。
付加価値額
付加価値額=(報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料±単年度損益)で計算します。
それぞれの内容は以下の通りです。
報酬給与額
報酬給与額=(報酬+給料+賃金+賞与+退職手当等+確定給付企業年金の掛金等)です。
報酬給与額は文字通り給与の性質があるものの合計額で、これが課税の対象になります。
仮に赤字だとしても従業員に給料は支払いますからね。
純支払利子
純支払利子=(支払利子△受取利子)です。
これは分かりやすいですね。
一般的には、銀行からの借入金に対して支払った利子の金額から受け取った利子の金額をマイナスした額が、課税の対象だと思って良いでしょう。
純支払賃借料
純支払賃借料=(支払賃借料△受取賃借料)です。
これも分かりやすいです。
法人が事務所や店舗などを借りている場合に支払った家賃の金額が、課税の対象だと思って良いでしょう。
単年度損益
単年度損益=(法人税の課税標準である所得の金額±特別の定め)です。
ここでは「特別の定め」は無視して頂いて、ザックリ「法人税の計算で算出された所得の金額」だと思ってください。
付加価値割
付加価値割=(報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料±単年度損益)×1.2%で計算します。
資本割
資本割は法人の資本金等の額を課税標準として課税されます。
資本金等の額は、一般的には資本金と資本準備金の合計額です。
資本割
資本割=資本金等の額×0.5%で計算します。
所得割
所得割=(法人税の課税標準である所得の金額±特別の定め)
ここでは上記の「単年度損益」と同じだと思ってください。
所得割の税率はここでは割愛します。
結構な納税額になる
では下記のような法人の場合を例に、法人事業税の納税額を計算してみましょう。
・資本金の額は3億円
・報酬給与額は5億円、純支払利子・純支払賃借料ともにゼロ
・単年度損益はゼロ
・資本金等の額は3億円
法人事業税の額は
・付加価値割→5億円×1.2%=600万円
・資本割→3億円×0.5%=150万円
・所得割→0
・合計→600万円+150万円+0=750万円
となります。
上記のように外形標準課税の対象となる法人は、利益がゼロの場合でもこれだけの額を納税しなければいけません。
なかなかの負担額になりますね。
外形標準課税のおおまかな仕組みはこんな感じです。
他にはない独特な税金ですね。
まとめ
・法人事業税の外形標準課税の対象となる法人は、期末資本金の額が1億円超
・赤字でも納税しなければならない仕組み
・あくまでも法人事業税だけのお話で、法人税は所得が課税標準
以上、マイナーな外形標準課税に光を!のコーナーでした。